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主にネオロマ、乙女ゲームの二次、夢小説を連載しております。
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中編になります。

土浦SIDE

香穂子が練習室を去ってから、
土浦はどれくらいこうして立ち尽くしているのであろう。

走り去っていく香穂子を自分は追いかけ無かった。

正確に言うと追いかけられなかった。
いつもは動くはずの足は根が張ったように動かなかった。

「俺何してんだ・・・。」
自嘲の笑いを浮かべて土浦は力なく椅子に座った。

あんな事するつもりなんてなかった。
傷つけることをするなんて・・・。


放課後練習室に一緒に行こうと思って、香穂子の教室を覗いたとき
加地に耳元で何か言われ赤くなって照れている香穂子を見た。


その時に感じた加地に対しての嫌悪感。
そして、心に生まれた不安という気持ち。

自分は香穂子を信じているから大丈夫だと言い聞かせた。


でも、今考えればそんな事出来るわけなかったんだ。

頭では分かっていても心は正直だ。
俺は加地に嫉妬したんだ。
自分ではなく加地に向けられている香穂子の視線や表情に。

最近香穂が元気がないのは薄々気が付いてはいたが、理由を聞かなかった。
もしかしたら、俺と付き合うのが嫌になったと言われたら。

そんなことを思っていた時、
加地と香穂のあのやりとりを見たんだ。

確かめればよかったんだ。
でも出来なかった・・・。
何を言われるかが怖くて。
自分が情けなく反吐が出る。
こんなに俺は臆病だったのかと。

 


練習室に来たあいつは明るい声で練習室入ってきた。
昨日までの香穂を想像できないくらいに。


その時俺の頭の中に
俺じゃ、ダメなのか。
加地の方ががいいのかって。

そういう考えが駆け巡って。
そしたら、俺の中で何かが弾けた。

 

 

そして気がついたら俺は香穂に頬を打たれてた。

 

「情けないな。」
泣きそうな悲しい顔して呟いた言葉は一人の練習室に寂しく消えていった。

 

 

 

香穂子SIDE
練習室を飛び出して香穂子は無我夢中で走った。
口の中が鉄のような味がしても、呼吸が苦しくなっても
この心の痛みが紛れるなら。
もうどうやって呼吸しているのかもわからないくらい
とにかく夢中で走り続けた。

泣きながら・・・。


あまりの体の疲労感に家に帰るとそのまま眠ってしまった。


あれ?
ゆっくり目を開ける。見慣れた天井が目に入る。

そっか、帰ってきてそのまま眠っちゃったんだっけ。
まだハッキリしてない思考のまま起き上がる。

お風呂でもはいろうかな〜。と、思いながらふと鞄の中から出ている
携帯に目が行った。
メールと着歴を知らせるライトが点滅していた。

携帯を開けると。

『新着メール10件着歴6件。』
全て土浦だった。

今は、何も考えたくな・・・。
小さく溜息を一つついてから
携帯を閉じて机の上に置きお風呂に向かった。

香穂子は怒っているわけでは無い。
ただ、今は少し頭を整理する時間が欲しかった。

 

 

 

 

 


次の日もその次の日も香穂子は土浦を避けるように
休み時間や昼休みやHRが終わると教室を飛び出した。

相変わらず土浦のメールと着信は続いていた。
それを見るたびに心が苦しくなる。

時間が経てば冷静になってくる自分の思考。

会いたい。そう思う気持ちと
会えない。と、思う気持ち。

そんな自分のグチャグチャな気持ち。
そんな気持ちで奏でるヴァイオリンが上手に歌ってくれるはずも無く。

『最低な音』
まるで今の私みたい・・・。
ごめんね、上手に歌わせてあげられなくて。

森の広場の木陰でヴァイオリンを奏でていた手を止めて、蹲る。

どうしてこんな風になってしまったんだろう。
何が悪かったの?
どうして、どうしてこんなに好きなのに・・・。

香穂子の目は気づけば涙で溢れていた。

 

 

その頃土浦は香穂子の教室に来ていた。

また今日もかよ・・・。
香穂子がいないことをもう一度教室の入口から中を確認していると、
クラスの友人と話している加地と目があった。

「土浦じゃん?あれ?日野さん?」
土浦に向かって手を挙げて和かにやってくる。

「ああ。」
加地とは対照的に浮かない顔をして返事をする。

「日野さんなら、HRが終わったとたん急いで飛び出していったけど。」

「ああ。分かった、じゃな。」
そっけない態度の土浦に

「土浦。何か怒ってるの?」
加地に背を向けて去っていこうとする土浦を呼び止めた。

「よく分からないけど、何か気に食わないなら言ってよ。」
加地の声に土浦の足が止まる。

「僕には正直訳が分からないけど。八つ当たりなんてカッコわるいよ。」
教室のドアにもたれ掛かって土浦の方を見ている。

加地の言葉にカチンと来たのか土浦は振り返り加地の方を睨んでいる。

「ここじゃ、無理そうだね。場所変えよう。」
と、加地は歩き出す。


森の広場の隅の方に来ると加地は足を止めた。
土浦の方振り返り

「さてと、土浦は僕に聞きたいことあるんじゃない?例えば
日野さんのこととか。」
と、土浦を挑発するような言い方をする。

「加地!!」
加地を睨みつけ今にも掴み掛りそうな勢いの土浦。
そんな土浦を見て

「土浦、暴力反対だよ。
それに僕は君の指をダメにするわけにはいかないよ。
僕は君のピアノも好きだからね。」
両手を顔の横に上げて降参のようなポーズをとり困ったような顔をしている。

土浦は自分の拳をグっと握り加地から目を外らす。

「で、土浦は何をそんなに怒ってるわけ?」
加地は土浦を見て尋ねる。

「・・・・。」
何も言わない土浦に呆れたように

「じゃあ、僕が言ってあげようか。土浦はさっ、僕に妬いてるんでしょ?」

「っっ。」

「図星か・・・。じゃあ、やっぱりあの時見ていたんだね。僕と日野さんが
話をしていたところ。」

何も言わない土浦を他所に加地は益々饒舌に、

「怒ってるところを見ると、
何を話していたかまでは聞こえなかったみたいだね。
そのこと、日野さんに聞いたりしたの?」

相変わらず何も言わない土浦。

「その様子だと聞けてない・・・。然も、この所特に日野さん元気がないし
話しかけても上の空。土浦、日野さんと何かあったんだ。
僕絡みで。」

探るように土浦を見ている。
土浦は眉間にしわを寄せて黙ったまま地面を見つめている。

「土浦、僕は日野さんが好きなんだ。」
加地の告白に土浦は顔を上げる。

そんな土浦を一度見てから少し笑って加地は空を見上げた、

「でも、君が考えてるようなことは何もないよ。
日野さんの気持ちは僕が入り込むスキがないくらい君のことで一杯だからね。
僕にも意地がある、言うつもりもなかった。
だけど、これ以上日野さんが寂しくしてるのを見ているのは辛いんだ。」
先程まで余裕があった加地の顔に憂いの色が浮かんでいる。

「俺には無理だから・・・。無理だったから・・・。
日野さんはさっ。君が自分には相応しくないんじゃないかって
真剣に悩んでいたんだ。そんな彼女に君は気づいていた?」

空から視線を土浦に戻す。そして今にも泣きそうな顔で笑う。

加地の言葉に『はっ』とする。
悩んでいたのは気がついていた、でもそれがそんなことだとは・・・。

「僕はその相談に乗っていただけだよ。残酷だと思わない?
好きな子に、そんな悩みの相談をされるのって。
相談に乗るのよって言ったのは僕だけど。
でも、そんな僕の気持ちわかる?
異性として見られていない。
友人としてしか見られていない僕の気持ちが。」

「加地・・・。」
申し訳なさそうな顔をしている土浦を見て

「同情なんてしないでよ。余計に惨めになるからね。
それに僕は諦めたなんて言ってないよ。
僕にとってはこのまま君たちが別れてしまったほうが
ラッキーなんだろうけど。
でも、今回のことは僕にも責任があるからね。」

と、言って笑う加地はもういつもの加地に戻っていた。

「加地、なんか悪かったな。」
土浦が加地を見て謝ると

「まぁ〜。この貸しは大きいかな。
それに僕に謝る前に謝らなきゃいけない人居るんじゃないの?」

「ああ、そうだな。ごめん、行って来る。」
と、加地に笑顔でそう告げると走り去っていく。


黙って走り去っていく土浦の背中を見ながら、

「僕も、相当重症なのかもしれないな。君の笑顔がもどるなら
例え僕のものでなくてもいいなんて思ってしまうんだから。」

そう呟いて空を見上げると、
加地のそんな気持ちを吹き飛ばす位いい青空が広がっていた。

 

 

                   つづく 

 

 

 

 

 

あとがき


<span style="font-size:large;">ごめんなさ&#12316;いm(_ _)m</span>

本当に終わる予定だったんです!!

でも、思ったより加地君が頑張ってくれて嫌な役なのに、

報われない役なのに。

ごめんなさい全国の加地くんファンの皆様。

次は加地君を幸せにできるssをかかせていただきます。

次回で必ず終わらせてみせます。

おかしいな&#12316;。

では、また続き読みに来てくださいね!!

 

 


                    だっち
                2011・7・6 

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