昔の彼氏　⑤

彼は野々宮　暁（さとる）私より一歳年上の２４歳。
彼と付き合っていたのは約一年半。
彼が引っ越していってしまったのを気に遠距離になり、遠距離になってから
半年後にフラれた。
好きな人ができたと言われて。

近づいてくる彼を睨み付けるように見ていると苦い顔をして目の前で立ち止まる。

「変わらないね。あそびは。」
あそびをフッたことなど忘れたかのように彼の手が顔に触れようとしてくる。

『バッシ』
反射的に彼の手を自分の手で払いのけた。

「触らないで。」
そう言うと先程よりきつく睨みつける。

「そんな恐い顔しないでよあそび。」
払われた手を摩りながら苦笑いを浮かべた。

「そんな顔させてるのはあなたでしょ。」

「だってこうでもしないとあそびに会えなかったでしょ？」
悪気も無くそう言って笑う。

「馴れ馴れしくあそびなんて呼ばないで。私とあなたはもう関係ない他人なんだから。」

「寂しいこと言うんだね。」
暁は少し寂しそうな顔をした。

「寂しい？一体何なのよ。大人しく聞いていれば、何しにきたのよ！！
今更こんなところまでなんなのよ！！」
感情が抑えきれなくなったのかあそびは回りも気にせずに叫び出す。

「あそび。」
そう言って気まずそうにあそびを見る。

「名前なんて呼ばないで！！」
自分の手で両耳を塞いで目を瞑る。

「あの時は、ごめん。でも、あそび俺はあそびとまた友達に戻りたいんだ。
付き合うとかじゃなくてさ。一年半も付き合えたんだからきっといい友達
ううん、親友にだってなれる気がするんだ。俺はあそびとまた一緒にいたいんだ」
暁の口から出た言葉はあそびの想像を遥かに超えていて、怒りを通り越して
呆れるあまり出てくる言葉がなかった。

ありえない。
元々付き合っている頃から少し変わっていたけど、ここまで酷いとは。
付き合いをたった本人からそんなことを言われるなんて思ってもみなかった。
ヨリを戻そうととかじゃないの？普通・・・。
なのによりによって親友？冗談じゃない！！
人を馬鹿にするにも程がある。
今まで人を憎いという思いは抱いたことはあったが殺意は抱いたことはなかった、
今の今までは。

自分の拳を握りしめる。

私があんたに振られたときどれだけ泣いたか知ってる？
どれだけ胸が潰れそうだったか。
遠距離になって仕事が忙しくて会う時間が減ってそのせいだって仕事を
辞めようかと思ったこととか、知ってるの？
どうやって立ち直ったか。
なんにも知らないくせに親友にだってなれる？
どの面下げて言ってるのよ！！

唇を噛み締めて暁を睨みつける。

「ふざけるな！！！！」
左の拳を暁頬目掛けて打ち付けた。

相当な威力だったのか、暁後ろに吹っ飛んだ。

殴った拳が痛いのか、暁に言われた言葉が辛かったのか分からないがあそびの目からは
大粒の涙が溢れていた。

いつしか二人の周りには人だかりが出来ていた。

「水森・・・か？」
聞きなれた声が人だかりの中から聞こえてきた。

その声の男はあそびの側まで寄ってくる、そして目の前に倒れている男を見て

「まさか、お前がやったのか？」
その時初めてあそびは声の主の顔を見た。

「ありかわさん・・・。」
涙でぐしゃぐしゃになった顔のまま傍に来た将臣を見た。

「水森！！お前どうした？！」
あそびの顔見て驚いて声を上げる。

「な、何でもないんです。すみません。失礼します。」
と、暁を見て一度睨んだあと走り去っていってしまった。

最低だよ！！！
よりによって有川さんに見られるなんて・・・。
涙は止まらないし。
あん奴のせいで泣いてるなんて。
悔しい。
情けないよ。

止まらない涙をなんども手で拭いながら全力で走って走って足が動かなくなるまで
走った。

走り付いた先は、見たこともない住宅地の中の公園だった。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　つづく

あとがき

更新待たせた割にはこれだけ・・・。
m(_ _)m

暁はどうしょうもない男です。
が、悪い男ではありません。
ので、少々常識が無いだけでございますので。

次回もまた遊びにきていただけると嬉しいです。

　　　　　　　　　　　　　　　だっち
　　　　　　　　　　　　　2011・8・9

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