「あそび」
余りにも美味しくて食べることに夢中だったあそびは
名前を呼ばれて目の前の湛増に視線だけ向けて。
「ナニ?どうしたの?」
と、答えた。
「全くあそびは色気より食い気ってな感じだね。
それよりさ、あそびに少し頼み事があるんだ。」
湛増には少し珍しく真面目な表情であそびを見つめる。
深紅の瞳にそう真面目に見つめられると金縛りにかかったようにあそびの身体は動かなくなり、
その瞳に吸い込まれそうになってしまっていた。
「今週の休みなんだけど一日俺にくれない?」
「はっ?」
湛増の言った意味が分からずに間抜けな声を出す。
くれって。
「もしかして、休みの日に付き合えということ??」
「ああ。」
「なんで?」
顔をしかめながら口に運ぼうとしていた箸を置き湛増を見た。
「つれないね〜。あそび。俺の誘いを断るのはあそびくらいだぜ。」
そう言って軽く笑う。
凄い自信。
・・・・。
そんなことはないと思うけど断られたことないんだろうな。
「あそび。俺の誘い断るつもり??」
やけに楽しそうな笑顔であそびを見ている。
「そんなのあたりま・・・。」
そう言いかけて話すのをやめる。
もしかして藤原君。
あの時の貸しを・・・・・。
「あそび断るつもり?」
いつのまに来たのか湛増はあそびにのすぐ近くまで来ており
あそびの傍で色っぽくそう囁く。
「///!!」
「あそび」
再びそう囁かれてミルミル赤くなっていくあそび。
「ごめんごめん。少しからかい過ぎたね。」
そう言ってあそびから離れる。
「で?一日くれるのかい?あそびは。」
・・・・。
「断れないんでしょ?どうせ。」
赤くなっている顔を誤魔化そうと置いた箸を再び持ち料理を口に運ぶ。
「嫌なら断ればいいよ。」
そう言っている湛増だが表情がとても楽しそうだ。
くっ!!!
悔しすぎる。
でも、借りは借りだから。
さっさと済ましてもらってしまったほうがいいよね。
もしこれで断ったらもっと変なこと言われそうだし。
付き合えばいいんだよね、要は。
友達とあそびに行く感覚で行けばいいじゃない!!
そうだそう思おう!!
「分かった。付き合います。」
「ありがと、助かったよあそび。」
なんだか無邪気に喜ぶ湛増を見ていたら、そう悪くもないことかもと思い直してしまっていた。
湛増の『助かったよ。』という言葉の持つ意味も考えずに。
そして、その話が終わり二人はその日の夜遅くまで盛り上り、
あそびは次の休みというのが明日であることに全くというほど気がついていなかった。
翌日の朝の10時
『ブ〜、ブ〜』
先程から何度もテーブルの上に置いてある携帯が震えている。
当人とは言うとまだ布団の中で夢の世界だ。
「そんなに食べられな・・。むにゃむにゃ。」
然も今にもベットからずり落ちそうな格好で・・・。
そして、何度も鳴っていた携帯が止まった。
『ピンポーン』
携帯が鳴りやんだと思ったら今度は部屋のチャイムが鳴る。
『ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン』
何度も何度も嫌がらせかと思うほど。
さすがのあそびも夢の世界から現実の世界へ引き戻される。
「煩いな・・・。」
「ピンポーン、ピンポーン」
相変わらず鳴り止む、気配のないチャイム。
「誰よ、朝から。はいはい。」
チャイムが鳴り始めて10分くらい経った後
ベットからようやく身体を起こしインターホンへ向かった。
「はい。どなたですか?」
起きたばかりなのと昨夜結構な量の酒を飲んでいたせいで、嗄れた声ででる。
「あそび。迎えに来たぜ。」
「・・・。どなたですか??」
「声だけじゃ分かってもらえないなんて悲しいね。」
声だけで・・・・。
「もしかして藤原君??」
「正解。早く出てこいよ。さっ行くよあそび。」
「えっ??行く?何処に?」
「昨日言ったろ、一日付き合ってくれるって。」
・・・・・。
昨日??
ああ、あのことね。って
えっ??
「次の休みって、もしかして今日のこと???」
一気に覚醒したのか急に焦り出すあそび。
「ああ、そうだぜ。」
湛増にそう言われて慌てて壁にかかっている鏡で自分の格好を確認した。
とても今すぐ出かけられる姿ではない。というよりも人様にお見せ出来るような姿ではない。
ショートパンツにキャミソール方っぽの紐はずり落ちている、そんなラフな格好。
然も寝ていたのだからノーブラ、いつものごとく髪はボサボサで跳ねまくっている。
いつもよりさらに・・・。
酷い・・・。
自分の姿を見てあそびは真っ青になっていた。
つづく
あとがき
この章は結構長くなりそうです(^。^;)
年内の終わるか微妙なところです・・・。
が、ちゃんと完結させますので!!
そのうち弁慶さんご出演予定です(-^〇^-)
ではでは、続き読みに来て頂けたら嬉しいです!!
だっち2011・12・3
先日の件で私は以前ほど藤原君に苦手意識を持つことはなくなっていた。
それどころか、気軽に話しかけることのできる男友達という位置付けまできていた。
意外と話してみると頭は切れるし、物をよく知っているし、
遊び人だと思っていたあそびはスッカリそんな湛増を見直していた。
時々見せる、あそびが最も苦手とする女性に対してのスキンシップだとか、
女性にかける口説き文句のような歯の浮くようなたセリフだとかを抜かせば。
でも、あの日以降湛増はあそびにはそういうような行動や言動パタリとしなくなっていた。
一日の仕事が終わり鼻歌を歌いながら着替え終わったあそびは、店の中を歩いていた。
明日はお休み♪
何して過ごそうかな〜。
溜まっているゲームをするのもいいな〜。
買い物?いいねぇ〜。
久しぶりに映画とか行っちゃう?
「皆さん!!おつかれさまでした。」
と、ご機嫌な様子で店に残っているスタッフに声をかける。
「水森あそび、これから飲みに行ってきます!!では、また来週。お先に失礼します〜。」
「また飲みに行くのか。水森。」
九郎は渋い表情を浮かべてあそびをみいている。
「いいじゃねえか。あすは休みだしな。飲み過ぎんなよ。」
呆れながらもあそびをフォローしてくれる将臣。
「そうですよね!!なんだったら一緒に行きますか?源さん。」
そんなあそびの誘いに間髪いれずに
「俺は遠慮しておく。あすは朝から稽古だからな。」
と、冗談で言った誘いをしっかりと断っている九郎に、
横にいた冗談だと分かっている将臣に大爆笑している。
「そ、そうですか・・・。」
まさか、そんなしっかり断られると思っていなかったあそびは、
やや振られたような気持ちなってしまった。
「飲みに行くのかい?」
そんな時あそびの後ろから湛増が話に入ってきた。
湛増の方を振り返り、「お疲れ様。」と、声をかけたあと
「うん。だって明日は休みだよ!!今日行かずしていつ行くの!?」
「あそびらしいね。」
と、言った後フッフッ。と、湛増で鼻で笑われた。
「そう?」
首を傾け両腕を組みながら湛増を見た。
「付き合うよ。」
「えっ?」
突然の湛増の申し出に驚いた表情を浮かべる。
「ていうのはついで、本当は少しあそびに話があるんだけど。」
笑いながら言う湛増に『どきっ』と、しながらも。
「そうなの?なら、飲みに行く?」
抵抗されると思っていたあそびに意外とすんなり了承された湛増は、
驚いた表情うかべながら
「なら、行こうぜ。」
と、遊びにに声をかけた。
「うん!出〜発!!」
と、二人は夜の街に出かけていった。
「にしても広すぎない?」
部屋の中をキョロキョロと見回しているあそびをよそに
「さてと、あそび何飲む?」
湛増はドリンクのメニューを見ている。
あそびの行きつけのお店に入った二人は『カウンター』と、
店員に言おうとしたあそびの横から湛増に
『今日は個室で』と、先に言われてしまい、
二人なのに何故か8帖ほどもある個室にいた。
落ち着かない様子のあそびに
「何もお前をとって食いやしないから安心しな。」
余裕の笑顔を向けられて
食うって・・・。
そんなことさせるものですか!!
しかも、そんな余裕な顔で。
舐めていたら窮鼠猫をも噛む
なんですからね。
悔しいので
「こちらにだってそんな気なんてサラサラないですから。」
と、お返しとばかりに余裕の表情で答える。と
「言ってくれるね〜。やっぱあそびだな。」
と、湛増は嬉しそうな笑顔で言うとで再びドリンクのメニューに視線を戻した。
「私、生ビールでお願いします〜。」
湛増にそう告げると自分はフードメニューを見始めた。
「じゃあ、俺も生にするかな。」
と、生ビール二つを店員に注文する。
「藤原君って何か嫌いなものある?」
メニューを見ながら湛増に尋ねる。
「いや、特には無いね。」
「そう。じゃあ、なすの一本漬けとタコわさでしょ、あっ、えだま」
「ちょっと待って。」
あそびがフードメニューを見ながら注文の品を湛増に確認していると途中で
湛増からストップがかかった。
「えっ?何か嫌いなものでもあった??」
「そうじゃないけどさ。」
メニューから顔を少しだけ出して湛増の方を覗き見ると、呆れ顔の湛増があそびを見ていた。
「どうしたの??そんな顔して。」
「どうしたって・・・。あそび、お前いつもそんなオヤジ臭いもの注文してるの?」
「オヤジくさい??」
湛増の言葉に顔を顰める。
「ああ、そんなもんばっか頼んでるから男ができないんだぜ。出るよ。」
そう言うと湛増は帰り支度をはじめる。
『えっ、えっ』と言いながら湛増に手を引かれて店を出ていく。
丁度生ビールが運び込まれる直前に。
待ちに待ったビールが、目の前にあるのにおあずけを食らってしまったあそびだった。
私のビール!!!!
そして湛増に連れてこられたのは、少し高級そうな割烹料理屋だった。
ここでも、個室に案内されて落ち着かない様子のあそびをよそに
湛増は手馴れた感じでドリンクの注文を済ませていた。
まだ、生ビールのおあずけを食らった恨みは残っているものの
あそびに高級そうな店の内装に興味津深々だった。
そんなあそびを見ながら湛増は満足そうに軽く笑う
「気に入ってもらえたかい?」
「えっ。あ、まあ。悪くはないんじゃない。」
内心すごく素敵だと思っているのだが
正直に言うのが何だかしゃくにさわるので精一杯の見栄を張ってみる。
「なら、良かった。此処はうちの家族がよく利用している店でね。
味は俺が保証するよ。」
「そうなんだ。」
こんな高級そうなお店。
藤原君お坊っちゃまなのかな・・・。
こんな美形でお金持ちのお坊っちゃんでしかも、女性の扱いが上手い。
モテない訳けないよね。
「失礼します。」
二人の部屋の外から声がかかる。
襖が開かれ着物を着た綺麗な中年女性が入ってきた。
「久しぶりだね。女将。相変わらず綺麗だね。」
その女性の手を取りキスをする。
で、でた!!!
女性を見るとそうせずには居られない藤原病。
ひき気味で二人を見ているあそびに気がついた女将は。
「湛増さんは、相変わらずですね。益々お父様に、似てきていらっしゃいますね。」
そう笑う。
「女将。あいつの話はしないでくれるかい。」
苦い表情を浮かべて女将の手を放した。
「それは失礼しました。
湛増さんお連れの方がいらっしゃる時は、こういう行動は控えるべきですよ。」
優しい中身も厳しさが伺えあそびは自分の事を気遣っているとすぐわかった。
いい女将さんだな。それに藤原君も女将さんの前だと形無しだね。
楽しいかも。
「女将さん。大丈夫ですから。」
と、女将の方を見て笑えば
「湛増さん、いい人見つけなさりましたね。」
と、湛増を見て優しく笑う。
いい人・・・。
違う違う。
女将さんそういうんじゃないんですから!!
首をすごい勢いで振りなが女将に詰め寄り
「女将さんそんなんじゃないんですから。
私こんなナンパやろうなんてタイプじゃないですから。女将さん!!」
そういった私は女将さん近づきすぎて引かれてしまった。
女将さんが運んできてビールで取り敢えずあそびは湛増と乾杯をして口に流し込んだ。
「美味し〜!!」
満足そうに半分ほど飲み干したグラスをテーブルに置いた。
目そして次々との前に運び込れる料理に目を奪われていた。
「夏だからね。今が日本料理の一番おいしいものが揃ってるだろう?
適当に注文しておいたけど何か食べたいものあったらいいなよ。」
湛増の言葉が耳に入っているかどうか定かではないが取り敢えず、
『うんうん』と頷いているあそび。
目の前の料理に目を輝かせているあそびに
「俺の話も耳に入らないほど、夢中なんて少し料理に妬けるね〜。」
少し面白くないという表情を浮かべている
湛増に全く気がついていないあそびに
『はぁ〜』と、軽くため息をついて頬杖を付いた。
鮎の塩焼き、鱧のお造り、芋茎のおひたし、うなぎの白焼きどれもこれも、
夏にしか食べられな料理。
あそびの喉がゴクリとなる。
「藤原君、ねぇ食べてもいい?」
嬉しそうな顔で無邪気に湛増に尋ねてくるあそびに少し不機嫌だった湛増も、
「全そんな無邪気に・・・。
本当にしょうがないねぇ。お前のために注文したんだ好きなだけ食べな。」
「わぁ〜い!!やった!!ありがとう。」
この世の幸せと言わんばかりの笑顔で
目の前の鮎を口にパクリと入れる。
「美味し〜くて死にそう!!」
「あそびは大げさだね。」
「そんなことない、ほら藤原君も食べてみなよ!!」
ごく自然にあそびは自分の食べかけの鮎を湛増の目の前に差し出した。
驚いて目を丸くしている湛増に『どうして食べ』と、言いかけて
「あっ!!ごめん、これは私の食べかけでした。」
と、箸を引っ込めようとした。
「いや、これでいい。」
引っ込めようとしたあそびに手を掴み箸にあった残りの鮎をパクリと、
口に放り込んだ。
「うん。旨いね〜」
ニヤリとあそびを見て笑う湛増。
鮎が無くなって軽くなった箸だけを握って動かないあそびに
「誘ったのはあそびだからね。」
余裕の笑を漏らしながらそう言った。
そして「日本酒でも頼もうか。」
と、言った湛増のその言葉はあそびには届いていなかった
藤原君私の食べかけの鮎食べたよね??ギャア〜!!
「ふ、ふ、藤原君!!今、あ、あ、鮎食べたでしょ!!!」
「ああ、だってあそびが食べろって言ったじゃん。」
言ったじゃんってなら食べろと言われれば何でも食べるんか〜い!!
差し出したのは私だけど、食べないよね普通。食べる?
いや、食べないよ。
恋人や家族でもないんだから。
飲み物とか切り分けたのならまだわかる。
藤原君の食べたのは私のかじりかけの鮎だよ!!
まだたくさんあるのになんで食べるかな。
流れで差し出しちゃったけど、一瞬藤原君だって止まっていたじゃない。
なのになんでそれを食べちゃうかな〜。
然も、あのしてやったり顔。
なんであんなに余裕なのよ!!
いつも。
恥ずかしくて照れているのは私だけなの!!
なんか悔しい!!
「あそび、いい加減自分の世界からこっちに帰って来いよ。」
呆れながらも楽しそにあそびを見ながら日本酒を煽っている湛増。
「し、失礼しました。帰ってきましたって元々藤原君が私の鮎を食べてしまうからでしょ。」
「さっきも言ったけど進めたのはあそびだぜ?」
「そうだけど、普通は食べないよね??」
「普通とかよく言うけど、じゃあさ普通って何?」
「・・・・。」
そう言われれば普通ってなんだろう。
「答えられないだろ。俺は俺人は人。それでいいだろ。」
最もな答えです。
ここで一般的とか常識的にとかは藤原君には通用しないみたい。
でも、俺は俺か。
大事なことなのかもしれないな。
湛増の言ったことに何だかやけに納得してしまっているあそびであった。
つづく
あとがき
書いていた時期が夏だったのであれれという感じです。
今時期の方が色々イベントがあって書きやすかったんですが
なにせ書き始めたのが春先だったので(^。^;)
イヤハヤ(;^ω^)
では次回もまた読みに来てくださると嬉しいです!!
だっち2011・11・30
女の子には(?)優しく?! 4
マジですか・・・。
血筋なんでしょうか。
知盛さんも一度寝たら起きないし・・。
でも、どうするの??
このまま放置するわけにいかないし・・。
「じゃあ、後は藤原君お願いね!」
と、湛増と目を合わさず何もなかったかのように帰ろうとあそびは席を立つ。
「ちょっと、あそびそれはないんじゃないの?
第一敦盛を誘ったのってあそびじゃん。」
湛増に痛いところをつかれて、帰るに帰れなくなってしまっいもう一度椅子に腰をかけた。
確かにそのとおりです。
さすがに無責任すぎるよね・・・。
「藤原君、敦盛君の家知ってる?」
「知ってるけど。」
「なら、運ぼう!!このままにしておくわけにもいかないし・・。」
「本気かい?」
「当たり前でしょ?]
と、立ち上がり敦盛の方にまわり立たせようと脇の下に自分の肩を入れる。
「藤原君、ナニぼ〜っと突っ立ってるの?早く手伝ってよ。」
動こうとしない湛増に痺れを切らして言った。
「あっああ。あそび、ちょっと待ってて」
と、何かを思い出したかのように、
言うとその場に二人をに残してどこかに行ってしまった。
このまま待っべきか座って待つべきか考えていると、湛増が直ぐに帰ってきた。
「じゃあ、行こうか。」
と、あそびの反対側から同じように敦盛を持つと歩きだした。
店を出たあと会計をしていないことに気づき、慌てて戻ろうとすると
「さっき、俺が済ましておいたよ。」
と、サラっと言われてしまった。
いつの間にと思いつつも
「後で払うからね。」と言えば『いらないよ』と、返ってきてしまい
『私が誘ったんだから』と言えば『じゃあ、貸し3で』と笑顔で言われてしまい、
『それは無し、藤原君がいらないというなら奢らせてあげます。』
と、自棄気味に言っているそんなあそびを見て湛増は嬉しそうに笑っていた。
そう言って自分にお金を払わせないようにした湛増の誘導の上手さに驚きつつも、
少しだけ湛増のことを見直していたあそびだった。
敦盛の家は湛増に言うには、ここからさほど遠くないらしい。
そして『ここだよ。』と、
藤原君の足が止まったマンションを見てに言われて私は驚いた。
ここって・・・。
私のマンションのお向かいさんじゃん!!
後ろを振り返り確認してみる。
やっぱり、私のマンションだ。
あの居酒屋からの帰り道が私の家への道と同じでもしかしたらとは思ったけど・・・。
まあ、料理長みたいね同じではなかったから少し安心したけど。
まさか、お向かいさんだったとは・・・。
マンションを見続けたまま動こうとしないあそびに
「どうしたんだい?」
と、湛増に話かけられる。
「あっ。ううん。なんでもない。ごめんね。さっ、中に運んでしまおう。」
と、マンションの中に入っていく。
敦盛君の部屋に勝手に入ってしまうのは躊躇われたが、
敦盛君がこんな状態では仕方ないと自分に言い聞かせた。
藤原君が慣れた手つきで敦盛君の鞄から鍵を取り出す。
敦盛君の部屋のある4階のフロアーに上がると、
私の部屋の玄関がこのフロアーから丸見えだということに気がついた。
私の部屋が3階だから本当丸見え・・・。
今まで、出会わなかったのが奇跡だ・・・。
藤原君が鍵を開け扉を開く。
不謹慎にも少しだけ敦盛君の部屋に入るのが楽しみだった。
綺麗ずきそうに見えて実は、部屋はすっごい汚かったりして、
いかがわしい雑誌とかあったらどうしよう。
なんて、想像を膨らませながら靴を脱いで勿論敦盛の靴も脱がせて中に入った。
湛増が部屋の電気を付ける。
目の前に広がる敦盛の部屋を見て思わず
「やっぱりか・・。」
と、呟いてしまった。
あそびの目に映った部屋は、
窓には紫色のカーテンが引いてありベットと本棚、
テ-ブル余計なものがなくきれいに整理整頓がしてある
8帖ほどの広さの敦盛らしい部屋だった。
部屋にあるベットに敦盛をそっと降ろす。
湛増の言ったことは本当らしく、今だに規則正しい寝息を立てて寝ていた。
そして敦盛を降ろしたあと、もう一度部屋を見回してみる。
本棚には料理関係の雑誌や、楽器の雑誌などが高さなどが揃えて綺麗に並べてある。
私の部屋なんかより余程綺麗・・・。
少し見習わなきゃかも。
こうやって突然人が来たら私の部屋じゃ・・・・。
無理・・・。
隠さなきゃならないものもたくさんあるし。
そんなことを一人で考えていると
「はい。これ。」
と、湛増によく冷えたミネラルウォーターのペットボトルをさしだされた。
「えっ?私に?って、これどこから持ってきたの?」
差し出されたペットボトルを受取りながら湛増に尋ねた。
「うん?敦盛の冷蔵庫だけど。」
当たり前のように答える湛増に、
「敦盛の冷蔵庫だけどって、
他人の家に勝手に入って然も勝手に冷蔵庫を開けた上に水まで飲んじゃって・・。」
半分呆れながら湛増にあそびは言う。
「大丈夫だって、こいつと俺は幼馴染だから。
それにしょっちゅうここには泊まりに来てるし。これも、俺が買ってきたもんだしね。」
と、敦盛が寝ているベットに腰をかけペットボトルの水をゴクリと飲んだ。
「幼馴染?」
「そっ。」
と、軽く答えるともう一口水を口に含んだ。
知らなかった。
考えてみれば、敦盛君と藤原君って共通点があまりないのにお店でも結構仲がよかったよね。
へ~。
なら、後は任せて帰っていいよね。
あまりここにいても仕方ないし。
藤原君がいるなら安心だよね。
「じゃあ、藤原君あと敦盛君のことお願いね?」
と、言って帰ろうと湛増に背を向ける。
「おいおい、一人で帰る気かよ。」
湛増が驚いた声で立ち上がる。
「えっ?藤原君今日ここに泊まるんだよね?」
と、湛増の方を振り返り確認する。
「そうじゃなくて、こんな遅いのに一人で帰るつもりなのかを聞いてるんだよ。」
「うん。大丈夫だよ。慣れてるし。じゃあね~。」
と、再び前を向き玄関に向かいドアノブに手をかけようとしたとき、
あそびの後ろから手が伸びてきてドアを開けられた。
振り返ると湛増の顔がすぐそばにあり慌てて顔を元に戻すと
「送るよ。」
と、真面目な表情の湛増に言われ
ここで言い合いをするのもどうかと思い取り敢えず部屋の外に二人で出た。
「ほんとに大丈夫だから。」
と、湛増を説得するも。
『何があるかわかんないだろ。
俺は、こんな深夜に女を一人で帰らせるほど甲斐性無しじゃないんでね。』
と、引く気はない様子。
いや~。
何もないですよ。
かなりの確率で。
だってここから見えますもん。
私の部屋・・・。
それに私だよ??
変なことあるわけないじゃん。
「本当、大丈夫だから。」
もう一度訴えてみる。
「ダメだよ。諦めなあそびさつ行くよ。」
と、半ば引きずられるようにして私は敦盛君のマンションを出た。
「でっ、どっちに行けばいいんだい。」
マンションの外に出た湛増は、あそびに尋ねる。
どっち、って・・・・。
もうついちゃってるんですけど・・・。
「あそび、俺は送るっていったら送っていくよ。
何があっても。だから観念してどっちか教えてよ。」
黙っているあそびが意地を張っていると勘違いしている湛増は、しつこく聞いてくる。
そして、そんな湛増に観念して
「ここ。」
と、いってじーと湛増を見つめるあそび。
「おいおい、俺はどっちか聞いてるんだぜ?
ここって方向じゃないじゃん。いい加減諦めなよ。」
と、呆れたようにあそびに言う。
「だから、ここ。」
「はっ?あそび。」
「だから、ここが私のマンションなの!!」
分かってくれない湛増に痺れを切らして自分のマンションを指を指して、
深夜だというのにもかかわらず湛増に叫んだ。
「ここって・・・。」
そう言って驚いて叫んだあそびを見ながら
「お前敦盛の家の目の前じゃん!!」
「そうだよ。だから送ってくれなくても大丈夫だって言ったじゃない。」
困ったように湛増に言えば
「そういうことなら、そう言ってくれればいいじゃん。」
と、言いながら両手を自分の頭の後ろで組んであそびのマンションを見上げた。
「私だって、今さっき知ったんだから。」
溜息を付きながら同じように自分のマンションを見上げた。
「そういうことじゃないんだけど・・・。まぁ、いいか。」
そう言ってマンションを見ている湛増は心成しか楽しそうに見える。
「それより楽しくなりそうだね。あそび。」
と、湛増は言いながら目だけ一瞬チロリあそびに向けた。
「いえ、楽しいことなんか何もないと思いますよ。」
あえて湛増を見ることなく
あそびは無表情のまま一本調子な声で湛増に答えた。
「いや、楽しくなるよ。」
と、自信満々に湛増に言い切られてしまったので何も言
えなくなってしまったあそびであった。
つづく
おまけ
「水森。」
「はい、料理長どうしたんですか?」
「お前のプライベートに口を出すつもりはないが深夜話をする時
少し小さな声で話をしなさい。寝ているものも多い。」
「は、はい。すみませんでした。」
「以後注意しなさい。あと、店のものと付き合う事に口を出すつもりはないが
仕事に支障のない程度にな。」
と、去っていくリズヴァーン。
「えっ??違がいますよ。違いますから料理長。
藤原君とはそんなんじゃないですから料理長~!!」
あそびの話も聞かずにそう言って去っていくリズヴァーンを追いかけ
おかしな誤解を必死で解いているあそびだった。
深夜は静かにしましょうね!!!
おしまい
あとがき
お粗末様でした・・・
取り敢えずこの女の子の編はおしまいです。
次からは貸しの代償編が始まります!!次回から弁慶さんも
ご出演ですので(^^♪お楽しみに!!
では次回も読みに来ていただけると嬉しいです!!
だっち2011・11・26
おまけPART2
あそび&望美の突撃レポート!!
~犬編~
九郎ver
「あそびさん!!九郎さん発見しました!!」
「ナイス望美ちゃん!!でどう?行けそう?」
物陰から雑誌に没頭して九郎を覗き見ている二人。
「九郎さん意外と鋭いからもしかしたらあそびさん。」
「うん。分かった!」
「じゃあ行ってきますね!突撃!!!」
大きな虫取り網を握り締めて九郎に突撃していく望美。
そっと近づき網にを被せようとしたとき
『ガシ』
望美の持っている網を手で受け止める
「!!!」
驚いている望美を見て九郎は
「何をしている、『バサッ』・・フンガ!!」
九郎が望美に気を取られている間に後ろからどこから持っきたのか
あそびは望美と同じく大きな虫取り網を九郎に被せた。
「捕獲完了!!」
「あそびさん!ヤル〜!!
「パチン!!」
望美とあそびはハイタッチを決める!!
「じゃあ、行っちゃいましょうか!あそびさん!」
「うん!勿論!はい、源さん犬なら何犬が好きですか??」
「はっ?何を聞いているんだお前は!」
「何って犬ですよ犬好きな!」
「あそびさん。私九郎さん絶対あれだと思うんだけど!」
と言ってあそびの耳元で何かを囁いている。
「あ~!!わかる!同じ!私もそう思った~!」
「じゃあ、せいので言ってみる?」
「じゃあ、九郎さんも一緒に言いませんか?」
呆然と二人を見つめている九郎。
「源さん!いいですか!一緒に言いますよ!好きな犬
せいの!!」
「柴犬(赤毛)!!」
三人(?)は声を揃えて言った。
「わ~!!やっぱりだ!!柴犬九郎さんっぽいよね!!」
「ダネダネ!これしかいないと思ってたんだよね~!」
二人は両手を
握り合いながら嬉しそうにジャンプしている。
「お、おい、お前ら俺は何も言っていないぞ!」
網の中から叫ぶ九郎。
「えっ?じゃあ、柴犬じゃないんですか??」
「あっ、いや。そうだが・・・。」
「なんだ源さんやっぱり好きなんじゃないですか~!」
「一瞬違うのかと思っちゃった!でも、やっぱりなんですね!!」
「うんうん!可愛いし従順だしね。源さんが好きそう。
それに今は豆柴っていうのもいるしいいよね。尻尾クルンとなっていて。」
「ですね~!!」
と、キャッキャと柴犬の話で盛り上がり去っていく二人。
ふと二人の足が止まりもう一度九郎をの方を振り向き
「いけないいけない。」
そう言って望美が戻ってくる。
てっきり九郎は自分に謝るために戻ってきたと思っていたが
「失礼します~。忘れちゃった!」
と、九郎に被さっていた網を取るとそそくさとあそびに元に戻っていった。
「・・・。何なんだあいつらは。」
網を被ってはいないものの、先程まで被っていた網のせい髪に静電気が起こり
アホ毛が山ほど立ち上がっいている九郎がポツリと呟いたがそのつぶやきは
誰の耳にも届くことはなかった。
おしまい!!
敦盛&リズヴァーン編につづく。
ここまでお付き合いくださってありがとうございました!!
女の子には(?)優しく?! 3
翌日、湛増とあそびは店で何事もなかったように接していた
取り敢えず気持ち湛増と距離を取った、周りに気がつかれないほど自然に。
そうして、一日の仕事が終わると昨日心に決めた敦盛を誘って飲みに行くという予定を決行した。
「敦盛君。今日付き合ってくれない??」
と、お店の掃除をしながら横で同じように掃除をしている敦盛に話しかけた。
「付き合うとは、飲みに行くということだろうか?」
「うん。」
「しかし、私はあまり酒は・・・。」
「知ってるよ。でも、寂しいのだよねいつも一人って。
堪には誰かと話しながらお酒を飲みたいの。只話し相手になって欲しいの。
ダメかな??
勿論私の奢りだから。あんまり遅くならないようにするから。
ねっ?敦盛君。」
と、あそびは目をキラキラさせて敦盛の腕をグッと掴んで見つめている。
「わ、分かった。私で良ければ付き合おう。」
と、人が良いというか優しいというか
少々あそびに押され気味だったか敦盛は快く(?)了承してくれた。
あそびは掃除が終わり、カウンターに座りながら一緒に飲みに行く敦盛を待っていた。
「すまない。待たせただろうか。」
と、私服に着替え終わった敦盛がやって来た。
「ううん。全然待ってないよ!」
と、カウンターから敦盛を向くと敦盛の横に湛増が立っていた。
「えっ?」
「その、水森殿と飲みに行くと行ったら一緒に行きたいと言ったので連れてきたのだが、
不味かっただろうか。」
と、敦盛は申し訳なさそうな顔をしてあそびを伺うように見ている。
「そ、そんなことないよ。沢山の方が楽しいいね。」
と、二人に引き攣り笑顔を向けた。
「それならば良かった。」
あそびの言葉を素直に受け取った敦盛は安心たのか、ニコリと笑ってくれた。
「今日は、楽しい夜になりそうだね。あそび。」
と、湛増にも怪しいまでの妖艶な笑で微笑まれる。
楽しいね~。
もっと可愛い女の子と飲みに行ったほうが楽しいと思うけど。
と、言う言葉を飲み込んで。
「そ、そうだね・・・。はっはっはっ。楽しそうだな~。
いや~三人で飲めるなんて最高だね!!さぁ、行こう行こう!!!」
突然強引なまでなハイテンションになったあそびに
若干ヒキ気味の二人と夜の街に消えていった。
「だから、そういうところが嫌なんだって言ってるの。」
あそびは、正面に座っている湛増に興奮気味に話している。
どうしてこうなったかというと、遡ること一時間ほど前
龍神の近くの居酒屋に入ったあそび達は、始めは大した話題もなく静かに飲んでいた。
湛増がある話題をフルまでは。
「あそびって、男と付き合ったことあるの?」
それまで、割と仕事の話などポツラポツラしていたところに
湛増からこんな話題をフラれたあそびは、危うく口に含んでいるお酒を吹き出しそうになった。
「ヒノエ・・・。」
と、敦盛は名前を呼び突拍子もない
質問をした湛増に困惑の表情を浮かべている。
ヒノエ??ってこの間も呼ばれてたよね。
って、そうじゃなくて、
「な、何突然・・・。」
「気になったから。で、どうなの?」
突然の質問にやっと出た言葉にあっさりと答えられ、再び同じ質問をされてしまった。
・・・・。
なぜ、私が藤原君にそんなこと答えなきゃいけないの?
女の人にそんな事聞かないよね?
せめてもう少し親しくなってからとかじゃない?普通。
湛増は、あそびの答え待っているのか
テーブルに頬杖を付いて黙ってあそびを見ている。
「ノーコメント。」
不機嫌そうに湛増を見てそう答えた。
「じゃあ、付き合ったことないんだ。」
と、言って驚いたようにあそびを見た。
その湛増の表情に馬鹿にされたような気がして気がつくと
『あります!!』と、椅子から立ち上がり叫んでいた。
そんなあそびを見て、湛増と敦盛は顔を顔を見合わせ
その後湛増は吹き出して笑い、敦盛もそんな湛増を見て苦笑いをしていた。
しばらく笑っていた湛増だが、
「ごめんごめん。じゃあ、男いたことあるんだね、あそびは。」
「あるよ。悪い。」
と、お酒を一口付けたあと静かに答えた。
実は、先程興奮して思わず立ち上がったあそびだったが、
立ち上がった瞬間店に来ていた客と店員の視線を一気に受け
『すみません。』と言って小さくなり静かに座た。
なので、また同じ恥を晒さないように湛増に叫びたい気持ちを、
抑えて大人しくしていたのだった。
「悪くはないよ。じゃあ、今は?」
次々と質問をしてくる湛増に
「ていうか、なんでそんなこと答えなきゃならないの?
プライベートは放っておいて欲しいんだけど。そう思わない?敦盛君。」
と、湛増の横に座っていた敦盛に同意を求める。
「とっくに、夢の中だぜ。」
そう言われて敦盛に目をやると先程まで起きていたはずが、
今はスヤスヤと寝息を立てて寝ている。
・・・・。
敦盛君!!!寝ないでよ~。
敦盛を見て愕然としているあそび。
「そういうわけだから、同意を求めたくても無理だね。残念だったね、あそび。」
湛増のその言葉にあそびの何かがはじけた。
「藤原君。私に彼氏がいようがいまいが藤原君に関係ないでしょ?
自分が居るからって誰かいい人紹介でもしてくれるとでも言うの?
それこそお節介がすぎる。
ブッチャケ、今は彼氏なんていませんけど
藤原君に紹介してもらうほど男に不自由してないですから。
(本当はしてるけど・・・)
結構です。
まあ、見た目も大したこともないし性格だっていいとは言えない、
酒飲みだし寝るの大好きで休みの日とかは乙女ゲームとかしちゃったりして
ちょっとオタクっぽいけど、でも、そんな自分嫌いじゃないし、
この今の生活に満足はしてるの。
だからこれ以上私を詮索するのやめてくれない!!」
ダムが決壊したかのように話し出したあそび。
100mダッシュしたかのように息を切らして『はあ、はあ、はあ』言っている。
そんなあそびを呆気に取られたように見ていた湛増が、一つ小さくため息を付いて
「あそび、何か大きく誤解してるみたいだね。さて何から説明しようか。」
と、興奮しているあそびを宥める様に話し出した。
淡々といたって冷静に話し出す湛増。
あそびも反抗もせずに大人しく聞いていた。
いつものオチャラケている湛増とは雰囲気が違ったからだ。
どうやら、湛増は純粋にあそびに興味があり別に誰かを紹介しようとか、
同情したりとかしているわけではないらしい。
要は、仲良くなりたいだけらしい。
「あそび、それに昨日の子は彼女じゃないよ。
それに俺は今特定の誰かと付き合ったりしてないし。
でもあそびが、付き合ってくれるって言うなら考えるけどね。」
と、付け足しのように言われてしまった。
また、ウインク付きで。
そして、今に至る。
「だから、そいうところが嫌いなんだって言ってるんだよ。」
湛増を睨みながら腹が立ったので、思いっきり頬をつ練り上げてやった。
「いって~。放せよあそび。」
赤くなりつつある抓られている頬の手を引っぱがして摩りながらあそびを睨む。
「なら、私のは今後そいう事禁止にしてくれる?なら、藤原君と仲良くやっていけそう。」
と、勝ち誇った笑顔を向ける。
「へ~。いいのかな、俺にそんなこと言って。」
「はっ?」
「休みの日乙女ゲームとかしてること店の皆にばらしても。」
「!!!」
考えてみれば、さっき私藤原君に言わなくてもいいことたくさんいってしまった。
今考えればなんであんな事いったんだろう。
チロット盗み見るとしたり顔をしている湛増と目があいニヤリと笑われた。
悔しくて目を逸らしてしまった。
うきゃ~!!!
悔しい!!!
見た?見た?今の藤原君の顔!!!
してやったりみたいな。
でも、でも・・・。
出来れば藤原君乙女ゲームのことだけは、内緒にしていて欲しいんですが。
乙女(?)の秘密なんです。
お願いします。
切望するように上目遣いで湛増を見れば、あそびのその行動で全てを悟ったのかのように
「言わないよ。でも、その代わり。」
と、何かを企んでいる顔を向けられる。
あれ?この表情どっかで・・・・。
あっ!!
『give&take』
と、二人の声がハモった。
驚いたのか目を大きく見開いている湛増。
「前にも同じ事言ってたでしょ?」
と、得意げに言えば
「そうだったね。忘れてたよサンキュ。あの時の貸しもあったんだったね。」
と、とんだしっぺ返しを食らった。
やっぱり、この人には言い返せないようになっているのかもしれない。
余計なことを言ってしまった・・・・。
もう一度忘れてください。と、願ってもそれは叶わぬ願いだった。
そして、あそびは湛増に大きな借りを二つも作ってしまったのだった。
湛増と夢中になって話していたので、気が付けばかなりいい時間になっていた。
「もうこんな時間、そろそろ帰らなきゃね。明日も仕事だし」
と、店内の時計を見て、驚いた顔をしながら目の前の湛増に言う。
「随分話し込んでしまったみたいだね。」
そう言うと椅子から立ち上がろうとして、隣で寝ている敦盛に気がついた。
あっ・・・。
藤原君との話に夢中になりすぎて敦盛君の存在をスッカリ忘れてた・・。
ごめんね、敦盛君。
湛増の横で寝ている敦盛を揺すって起こそうとする。
「敦盛君、敦盛君、敦盛君ってば!!」
何度呼ぼうが、揺すろうが一向に起きる気配がない。
「敦盛君ってば!!!」
と、もう一度起こしているあそびに
「こうなったら、無理だな。ちょっとやそっとじゃ起きないぜこいつ。」
と、隣で寝ている敦盛を呆れた顔で見下ろしながら言った。
「えっ?」
敦盛を揺すっていた手を止めて湛増を見る。
「あそびはまだ知らなかったんだね。
敦盛のやつ酒が入って寝ると、起きないんだ。恐らく、このまま朝まで起きないぜ。」
と、呆れ顔のまま肩を竦めていた。
つづく
あとがき
はい。どうでしたか??少しだけヒノエに近づけた気がするんですが(^。^;)
まだこんな感じお話が続きます(#^.^#)
敦盛君が少しかわいそうでしたね(^^ゞ
次回もご出演ですが睡眠中になりそうですZZZ
が、また読みに来ていただけると嬉しいです♪
だっち2011・11・22
女の子には(?)優しく?!
「ずいぶん冷たいね~;。あそびは。」
と、言っているがその表情はとても楽しそうだった。
「人間って人に教えられたことよりも、自分で体験した事の方がより深く理解出来るんだから。
それにそのうち藤原君なら体験できるかもよ。」
と、面白半分にニヤリと笑ってみせた。
「へ〜。楽しそうだね。そう言ってくれるってことは
それにあそびも付き合ってくれるってことなんだろ?」
そう言ってニヤリと笑った私にしたり顔を向ける。
・・・・。
やっぱりかなわない・・・。この人と武蔵坊さんには。
関わりたくないな出来れば。
そんな私を見てクスクス笑っている湛増に
「もういいかな。私疲れてるから帰りたいんだけど・・・。」
と、急に話を変えて帰ろうとする。
「ごめん、ごめん。怒るなよ。少し遊びすぎたみたいだね。」
帰ろうとするあそびの手を取りそこにキスをして
「これで許してよ。」と、ウインク付きで言われてしまった。
当然ごとく私はまたもや固まってしまった。
こういう免疫持ち合わせてないんですけど〜
それにこれで許せって・・。許せるどころか逆に不愉快なんですが。
湛増から手を振りほどき
「やめてよ!!もう、そういうことは他の子にしてよ。
私はこんなこと嬉しくもなんともないんだから。」
と、湛増を睨むとそんな事今まで言われたことがないのか驚いた表情であそびを見ていた。
そんな表情の湛増を見て、
あれ?少し言いすぎたかな・・・。
と思いながらも
「じゃあ、帰るね。お疲れ様。」
と、湛増を残したまま店を後にした。
店を出たものの何だか心が重く、真っ直ぐ家に帰る気になれなくて
何となくバーらしき所に入ってみた。
6席ほどのカウンターのみの狭い店内に入るとあそび以外に、
カップルらしき客が1組座っているだけだった。
カウンターの席に座ると、取り敢えずビールを注文する。
少し薄暗くムードたっぷりの店内、あそびは場違いなような気がしたが
目の前に運ばれてきたビールにスッカリ気にならなくなっていた。
店に持ってきていた雑誌に目を通しながら二杯三杯と酒が進んでいく。
どれ位そうしていたのだろう、
気がつくと入ったときに居たカップルの姿はもう無く、
あそびが四杯目となる酒を注文しようと、
マスターと話していると新しい客がカップルで入ってきた。
一番端の席に座るとなにやら女性の方が『きゃっきゃっ』言いながらイチャつきだした。
うるさいな。
と、思いながら何となくそのカップルに目をやると、可愛い感じの女の子と赤い髪をした
「えっ!?」
慌てて自分の口を自分の手で塞ぎ顔を背けた。
藤原君??
そこに、女性と腕を組んで仲良さそうに笑いながら酒を飲んでいる湛増が座っていた。
慌てて注文していた酒をキャンセルして、店をでようとする。
自分達の世界に入ってしまっているのか、
都合がいいことにまだこちらの事には気がついていない様子。
あそびは逃げるようにして顔をさり気なく雑誌で隠し会計を済ませて店を後にした。
外に出ると、
「は~。」
と、大きく息を吐いた。
別に悪ことをしてるわけでもなんでもないのだが、
先程の一件のこともあって湛増と顔を合わせずらかった。
それに、二人の邪魔をしてしまうのも嫌だったし。
仲良さそうだったな・・・。
あれ?なんで私こんなこと考えてるんだろう。よっぽど寂しいのかな私。
そんなことを思って店の方を振り返る。
「げっ!」
店の横に立っている人を見て思わずそう口に出していた。
「全く、随分な挨拶だね。あそび。」
店の横によし掛かり腕を組んで不機嫌そうあそびを見ている湛増が立っていた。
「どうしてって?顔してるね。でも、聞きたいのはこっちの方なんだけどね。」
湛増は相変わらず店の横によし掛かりながら不機嫌な声であそびに話しかける。
「なんで、また声も掛けずに何も言わないで出ていたんだい?」
「き、気がついてたの?」
と、びくつきながら聞くあそびに呆れ顔になり
「あんな狭い店内気が付かない方がおかしいと思うけど。」
と、ため息混じりで言われる。
「そんなに、俺が嫌いかい?」
ゆっくりあそびに近づき寂しそうにポツリと言われる。
そしてそう言われたあそびは答えることもせずに、
湛増のその姿に不謹慎にも見とれてしまった。
街灯の明かりに照らされ湛増の赤い髪がさらに燃えているように見える。
そして本来の綺麗な顔がさらに憂い顔をしていることによって、
あそびの目には余計にそんな湛増を妖艶に映しだしていた。
「あそび?」
ボーっと、見とれているあそびの顔を覗き込むようにして呼ぶ。
「わっっっっ!!」
突然目の前に湛増のドアップ(然も見とれていた顔が)が、
映ったので驚きすぎて後ろに尻餅を付いてしまった。
「いたたっ。」
と、自分のお尻を抑えて立ち上がろうとすると目の前に手が差し出される。
見上げると『ぷっ。』と、吹き出した後
『さっ、捕まって。』と、湛増が手を差し伸べてくれていた。
恥ずかしそうに、
「あ、ありがとう。」
と、言って湛増の手に捕まり立ち上がる。
何してるんだか。
私。恥ずかしい・・・。
顔合わせにくいなと思って気が付かれてない様に出てきたつもりが、
とっくにバレてて然もこんな風に助けてもらうなんて
何から何まで格好つかないな私・・・。
立ち上がった私に
「大丈夫かい?」
と、優しく聞いてくる湛増。
そんな湛増の態度に、なんて自分は子供なんだと思い知らされてた。
「うん。ごめんね。大丈夫だから。もうお店戻って。待ってるんでしょ?」
と、湛増の目を見ることができずに足元の地面を見つめていた。
「あそび、」
湛増が切ない声であそびを呼ぶ。
「本当、子供っぽい態度とってごめんね。
その、私藤原君を嫌ってる訳じゃないから。
なんていうか、私なんかと居てもその藤原君を満足させてあげられないっていうか、
あ〜、うまく言葉が出てこない。
本当こんなんでごめんね。
意味不明だよね・・・。」
と、苦笑いをしながら下を向いていた顔を湛増に向ける。
「でも、嫌いじゃないのは本当。
ただ・・・。」
「ただ?」
「苦手なんだよね・・・。」
本人にこんな事言うのは躊躇われたが、
ストーレートに言ってしまったほうがお互いの為になると考えて、
あそびは湛増に自分の思いを口にした。
「苦手?」
「うん。人間って、ほら合う合わないってあるでしょ?性格とか価値観とか。」
湛増は無表情にも近い表情で黙ってあそびの話に耳を傾けている。
「怒ったよね?でも、このままだと私藤原君に酷いこと言ってしまいそうだし、
正直に私の気持ちを言ってしまったほうがスッキリす」
「怒ってないよ。」
あそびが言い終わる前に湛増がそう、口に出していた。
「本当、あそびは何から何まで面白いね~」
と、真っ直ぐあそびを見つめて笑いながら言う。
「はっ?」
湛増の言葉の意味が分からず眉間にしわを寄せて訝しげに湛増を見つめた。
「ごめんごめん。お前が、俺を嫌いじゃないならそれでいい。
苦手?俺はそんなことないぜ。だから、俺は今までどうり行かせてもらうよ。
それに、俺はお前と合わないとは思ってないしね~。」
と、余裕綽々とあそびに楽しそうに話す。
・・・。
私の話聞いていたのかなこの人は。
自分が良ければそれでいい俺様的考えね。
もう一言ガツンといってやろうと意気込んで
口をひらいたその時
『ブ~;ブ~』
湛増のポケットから携帯電話が震える音がした。
「ちょっと、ごめんあそび。」
と、あそびから顔を背けポケットをまさぐって携帯を取り出した。
何となくお店で待っているあの女の子かな〜
なんて思って待っていたらいたら、
言ってやろうと思っていた事がもうどうでもよくなってきて声を出さず
に『帰るね。』と、電話をしている湛増に手を振りながら口パクで言ったあと、
背を向けたところで湛増にしっかり手首を掴まれてしまった。
何とか手を振りほどうこと抵抗してみるもこの華奢な手のどこにそんな力があるのか
チットモびくともしない。
抵抗するのを諦めて、空いている方の手で脇腹をツンツン突っついてみるも、
『ビクッ』と、して一瞬手の力が緩んだだけで手を放すまではいかなかった。
弱点なしか・・・。
こうなったら大人しく待つしかないなぁ〜
と、湛増に背中を向けて大人しく待つことにした。
「あそび。」
少し経ってから電話が終わったのかあそびから手を放し湛増があそびを呼んだ。
「終わった?」
湛増の方を向くと、先程の雰囲気とは明らかに違って不機嫌な顔をして
こちらを見ている立っていた。
「あそび、俺から逃げようとするなよ。」
声も、不機嫌を物語っているかの様に低い。
「ご、ごめん。」
赤くなっている掴まれた方の手首を、
掴まれていない方の手で摩りながら湛増の放っている空気に押されたのか
あっさりと謝ってしまった。
「それより手首、大丈夫かい?
逃げられないようにちょっと強くにぎりすぎたみたいだね。見せて?」
と、険しい顔であそびの手首をとる。
「俺、女の子にはこんなに強く握ったりなんかしないんだぜ。」
と、言いながらあそびの手首を優しく自分の手で摩った。
あそびは、そんな湛増をただ黙って見つめていた。
湛増が何を考えているのかあそびには、全く分からなかった。
だから、急にこうやって優しくされると何を言っていいのか、
どうしたらいいのか分からなくなる。
然も、こんな美形の男子に自分構わられていること自体が奇跡みたいなものなのに
なんでそこまで優しくしてくれるのか。
「だ、大丈夫だから。ありがとう。」
と、少し赤くなった自分の顔を隠すようにして湛増から手を自分のところに引き戻す。
「あそび?」
そんなあそびの行動を不思議に思った湛増があそびの顔を覗き込んでくる。
真っ赤になってしまった顔を見られたくない一心で、
『な、なんでもない』と、言って湛増から距離を取る。
「あれ?もしかして、あそび照れてるのかい?」
嬉しそうにあそびの反応を伺う様に見ながら湛増はいった。
湛増のその楽しそうな態度にムッとして
「照れてなんかない!!」
と、湛増の方を振り向き叫んでみたものの真っ赤になった顔が
『照れてます。』と、言っているようなものだった。
突然のあそびの言葉に驚いたのか目を丸くしていた湛増だったが、
あそびのその顔見るなり『ぷっ』っと、吹き出して
「飽きないね〜。あそびは、本当に。
でもこれ以上引き止めてるとお前に本気で嫌われそうだからもう帰っていいよ。」
と、湛増が少しだけ寂しそうに言った。
「う、うん。じゃあ、何か色々とごめんね。」
と、言って湛増に別れを告げてその場を後にした。
一度だけ後ろを振り向くと、そこには湛増の姿はもうなかった。
結局、今夜はなんだったのかと考えても答えなど出るわけもなく
すごい疲労感だけが襲ってきた。
今頃、湛増はさっきの女の子と一緒に楽しい時間を過ごしてると思うと
なんだか悔しい気持ちになったが、これからどこかに行くという気力もなく、
明日こそは敦盛あたりを誘って飲みに行こうと強く心に誓うあそびだった。
づづく
あとがき
大した進展もなく終わってしまいました(^^ゞ
ヒノエに対して意地っ張りな主人公。
そして、女癖が悪そうなヒノエ・・。
これからですね(^^♪
年内にどこまで進めるかわからないですが頑張りますね。
将臣ほど長くはならないとは思います(本当?!)
次回もまた読みにきていただけると嬉しいです。
だっち2011・11・20
04 | 2024/05 | 06 |
S | M | T | W | T | F | S |
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