土浦SIDE
香穂子が練習室を去ってから、
土浦はどれくらいこうして立ち尽くしているのであろう。
走り去っていく香穂子を自分は追いかけ無かった。
正確に言うと追いかけられなかった。
いつもは動くはずの足は根が張ったように動かなかった。
「俺何してんだ・・・。」
自嘲の笑いを浮かべて土浦は力なく椅子に座った。
あんな事するつもりなんてなかった。
傷つけることをするなんて・・・。
放課後練習室に一緒に行こうと思って、香穂子の教室を覗いたとき
加地に耳元で何か言われ赤くなって照れている香穂子を見た。
その時に感じた加地に対しての嫌悪感。
そして、心に生まれた不安という気持ち。
自分は香穂子を信じているから大丈夫だと言い聞かせた。
でも、今考えればそんな事出来るわけなかったんだ。
頭では分かっていても心は正直だ。
俺は加地に嫉妬したんだ。
自分ではなく加地に向けられている香穂子の視線や表情に。
最近香穂が元気がないのは薄々気が付いてはいたが、理由を聞かなかった。
もしかしたら、俺と付き合うのが嫌になったと言われたら。
そんなことを思っていた時、
加地と香穂のあのやりとりを見たんだ。
確かめればよかったんだ。
でも出来なかった・・・。
何を言われるかが怖くて。
自分が情けなく反吐が出る。
こんなに俺は臆病だったのかと。
練習室に来たあいつは明るい声で練習室入ってきた。
昨日までの香穂を想像できないくらいに。
その時俺の頭の中に
俺じゃ、ダメなのか。
加地の方ががいいのかって。
そういう考えが駆け巡って。
そしたら、俺の中で何かが弾けた。
そして気がついたら俺は香穂に頬を打たれてた。
「情けないな。」
泣きそうな悲しい顔して呟いた言葉は一人の練習室に寂しく消えていった。
香穂子SIDE
練習室を飛び出して香穂子は無我夢中で走った。
口の中が鉄のような味がしても、呼吸が苦しくなっても
この心の痛みが紛れるなら。
もうどうやって呼吸しているのかもわからないくらい
とにかく夢中で走り続けた。
泣きながら・・・。
あまりの体の疲労感に家に帰るとそのまま眠ってしまった。
あれ?
ゆっくり目を開ける。見慣れた天井が目に入る。
そっか、帰ってきてそのまま眠っちゃったんだっけ。
まだハッキリしてない思考のまま起き上がる。
お風呂でもはいろうかな〜。と、思いながらふと鞄の中から出ている
携帯に目が行った。
メールと着歴を知らせるライトが点滅していた。
携帯を開けると。
『新着メール10件着歴6件。』
全て土浦だった。
今は、何も考えたくな・・・。
小さく溜息を一つついてから
携帯を閉じて机の上に置きお風呂に向かった。
香穂子は怒っているわけでは無い。
ただ、今は少し頭を整理する時間が欲しかった。
次の日もその次の日も香穂子は土浦を避けるように
休み時間や昼休みやHRが終わると教室を飛び出した。
相変わらず土浦のメールと着信は続いていた。
それを見るたびに心が苦しくなる。
時間が経てば冷静になってくる自分の思考。
会いたい。そう思う気持ちと
会えない。と、思う気持ち。
そんな自分のグチャグチャな気持ち。
そんな気持ちで奏でるヴァイオリンが上手に歌ってくれるはずも無く。
『最低な音』
まるで今の私みたい・・・。
ごめんね、上手に歌わせてあげられなくて。
森の広場の木陰でヴァイオリンを奏でていた手を止めて、蹲る。
どうしてこんな風になってしまったんだろう。
何が悪かったの?
どうして、どうしてこんなに好きなのに・・・。
香穂子の目は気づけば涙で溢れていた。
その頃土浦は香穂子の教室に来ていた。
また今日もかよ・・・。
香穂子がいないことをもう一度教室の入口から中を確認していると、
クラスの友人と話している加地と目があった。
「土浦じゃん?あれ?日野さん?」
土浦に向かって手を挙げて和かにやってくる。
「ああ。」
加地とは対照的に浮かない顔をして返事をする。
「日野さんなら、HRが終わったとたん急いで飛び出していったけど。」
「ああ。分かった、じゃな。」
そっけない態度の土浦に
「土浦。何か怒ってるの?」
加地に背を向けて去っていこうとする土浦を呼び止めた。
「よく分からないけど、何か気に食わないなら言ってよ。」
加地の声に土浦の足が止まる。
「僕には正直訳が分からないけど。八つ当たりなんてカッコわるいよ。」
教室のドアにもたれ掛かって土浦の方を見ている。
加地の言葉にカチンと来たのか土浦は振り返り加地の方を睨んでいる。
「ここじゃ、無理そうだね。場所変えよう。」
と、加地は歩き出す。
森の広場の隅の方に来ると加地は足を止めた。
土浦の方振り返り
「さてと、土浦は僕に聞きたいことあるんじゃない?例えば
日野さんのこととか。」
と、土浦を挑発するような言い方をする。
「加地!!」
加地を睨みつけ今にも掴み掛りそうな勢いの土浦。
そんな土浦を見て
「土浦、暴力反対だよ。
それに僕は君の指をダメにするわけにはいかないよ。
僕は君のピアノも好きだからね。」
両手を顔の横に上げて降参のようなポーズをとり困ったような顔をしている。
土浦は自分の拳をグっと握り加地から目を外らす。
「で、土浦は何をそんなに怒ってるわけ?」
加地は土浦を見て尋ねる。
「・・・・。」
何も言わない土浦に呆れたように
「じゃあ、僕が言ってあげようか。土浦はさっ、僕に妬いてるんでしょ?」
「っっ。」
「図星か・・・。じゃあ、やっぱりあの時見ていたんだね。僕と日野さんが
話をしていたところ。」
何も言わない土浦を他所に加地は益々饒舌に、
「怒ってるところを見ると、
何を話していたかまでは聞こえなかったみたいだね。
そのこと、日野さんに聞いたりしたの?」
相変わらず何も言わない土浦。
「その様子だと聞けてない・・・。然も、この所特に日野さん元気がないし
話しかけても上の空。土浦、日野さんと何かあったんだ。
僕絡みで。」
探るように土浦を見ている。
土浦は眉間にしわを寄せて黙ったまま地面を見つめている。
「土浦、僕は日野さんが好きなんだ。」
加地の告白に土浦は顔を上げる。
そんな土浦を一度見てから少し笑って加地は空を見上げた、
「でも、君が考えてるようなことは何もないよ。
日野さんの気持ちは僕が入り込むスキがないくらい君のことで一杯だからね。
僕にも意地がある、言うつもりもなかった。
だけど、これ以上日野さんが寂しくしてるのを見ているのは辛いんだ。」
先程まで余裕があった加地の顔に憂いの色が浮かんでいる。
「俺には無理だから・・・。無理だったから・・・。
日野さんはさっ。君が自分には相応しくないんじゃないかって
真剣に悩んでいたんだ。そんな彼女に君は気づいていた?」
空から視線を土浦に戻す。そして今にも泣きそうな顔で笑う。
加地の言葉に『はっ』とする。
悩んでいたのは気がついていた、でもそれがそんなことだとは・・・。
「僕はその相談に乗っていただけだよ。残酷だと思わない?
好きな子に、そんな悩みの相談をされるのって。
相談に乗るのよって言ったのは僕だけど。
でも、そんな僕の気持ちわかる?
異性として見られていない。
友人としてしか見られていない僕の気持ちが。」
「加地・・・。」
申し訳なさそうな顔をしている土浦を見て
「同情なんてしないでよ。余計に惨めになるからね。
それに僕は諦めたなんて言ってないよ。
僕にとってはこのまま君たちが別れてしまったほうが
ラッキーなんだろうけど。
でも、今回のことは僕にも責任があるからね。」
と、言って笑う加地はもういつもの加地に戻っていた。
「加地、なんか悪かったな。」
土浦が加地を見て謝ると
「まぁ〜。この貸しは大きいかな。
それに僕に謝る前に謝らなきゃいけない人居るんじゃないの?」
「ああ、そうだな。ごめん、行って来る。」
と、加地に笑顔でそう告げると走り去っていく。
黙って走り去っていく土浦の背中を見ながら、
「僕も、相当重症なのかもしれないな。君の笑顔がもどるなら
例え僕のものでなくてもいいなんて思ってしまうんだから。」
そう呟いて空を見上げると、
加地のそんな気持ちを吹き飛ばす位いい青空が広がっていた。
つづく
あとがき
<span style="font-size:large;">ごめんなさ〜いm(_ _)m</span>
本当に終わる予定だったんです!!
でも、思ったより加地君が頑張ってくれて嫌な役なのに、
報われない役なのに。
ごめんなさい全国の加地くんファンの皆様。
次は加地君を幸せにできるssをかかせていただきます。
次回で必ず終わらせてみせます。
おかしいな〜。
では、また続き読みに来てくださいね!!
だっち
2011・7・6
土浦と付き合いだして3ヶ月が過ぎようとしていた。
最近香穂子は思うことがある。
自分の彼氏土浦梁太郎がカッコ良すぎる。
彼は、容姿は勿論、勉強だってそこそこ出来るし、スポーツマンで、
背も高く、体型だって文句のつけようがなく、
然もピアノまで弾けるときている。
彼は気付いていなが、実は女子からもかなり人気がが高いのだ。
そんな非の打ち所がない彼に、自分は釣り合っているのかということだった。
土浦に比べて、自分は、ヴァイオリンはまだまだだし、
勉強だって得意とは言えない、
容姿や体型をとっても飛び向けてというものは無く
極々、平凡だ。
「土浦君、私なんかでほんといいのかなぁ〜」
たまたま、
香穂子のクラスに遊びに来ていた天羽に愚痴っているところだ。
「どうしたの?急に。何か誰かに言われたの?」
「ううん。言われてないけど。だって、土浦君かっこ良すぎるんだもん。」
「・・・。惚気話なら他所でやって欲しいんだけど。」
呆れた顔をして香穂子を見ている天羽に
「惚気じゃないよ。だって、土浦君はなんでも揃ってるのに私は。
これといって何もないんだよ。そんな私の何処が良いのかなって。」
「日野ちゃん・・・。そんなことないと思うよ。
でもさ、そんなに気になるんだったら土浦君に直接聞けばいいんじゃない?」
首をブンブン横に振りながら
「無理だよ。そんなくだらないこと考えてたのかって呆れられちゃうよ。
つまんない女とか思われそうだし。」
と、いうと
「そんなことないと思うけどな。」と言っている途中でチャイムが鳴り
『ごめんね途中で』と言って自分の教室に帰ってしまった。
気持ちがスッキリしないまま放課後になった。
自分の机に伏せっていると、
「どうしたの日野さん。体調でも悪いの?」
と、声を掛けられる。
顔を上げると心配そうに香穂子の前に立っている加地がいた。
「ううん。大丈夫。元気は元気なんだけど・・。」
加地は香穂子の顔を見るとホッとしたようで、
香穂子の前に座る。
「何か、悩み事??」
「えっ?」
「顔に書いてあるよ。私悩んでます。ってね」
と、優しく加地に笑われてしまう。
「そう?」
「うん。だって。君はとても分かりやすいからね。
<span style="font-size:x-small;">それに僕はいつも君を見ているから。</span>」
「えっ?!」
「なんでもないよ。それに、どうせ土浦あたりの事じゃないの?」
と、耳元で囁かれてしまう。
「///!!」
香穂子の顔がミルミル真っ赤になっていく。
「ビンゴなんだ!!」
真っ赤な顔の香穂子を楽しそうに見ている。
「僕でよければ聞くよ。」
少し考えて、思い切って加地に自分が思っていることを
話してみた。
話を聞きおわると驚いたように
「日野さん。そんな事考えたの??」
加地に言われた。
「うん。だって。」
「まったく、土浦も罪作りな男だね。
君をここまで悩ますなんて。」
「加地君・・・。」
困ったように加地を見れば。
「君は何にも持って無いっていったけど、そんなことは無いよ。
じゃなければ僕はこんなにも君に惹かれたりなんかしないよ。」
「加地君。またそういうこと言うんだから。」
よ、笑いながら加地を見る。
「まいったな。これだけ言っていても本気にされないなんて。
余程土浦の事しか見えてないんだね、君は。」
「えっ?」
「いや、僕の独り言だから気にしないで。
君はそのままでも十分魅力的な女性だよ。
でも、堪には溜め込んでないで素直な君の気持ち
土浦に伝えることも大事なことだと思うよ。
人は自分が思ってるよりその人が何で悩んでるなんて
分からないものなんだから。」
加地の言葉にハッとして
今日にでもこの気持ちを土浦に話してみようとそう心に
決めるとさっきまで重かった気持ちがスーと軽くなった。
「加地君ありがとう。なんだかスッキリしたかも。」
と、加地に笑顔で礼をいえば。
「なら、良かった。やっぱり君には笑顔が一番似合ってるね。」
なんて返ってきた爽やかスマイル付きで。
「練習に行くね。」
と、加地と別れると土浦と練習を約束していた場所に向かう。
スキップなんかして。
もう、始めちゃってるよね。
予約していた練習室の扉の窓から中をのぞく。
中には先に来ていた土浦がいた。
『トントン』
一応ノックをして中に入った。
「遅くなってごめんね。」
練習していた土浦が手を止た。
「ああ。」
そっけない返事が返ってくる。
もしかして、遅れたこと怒ってる??
「ごめんね。その、少し話し込んでたら。遅れちゃって・・。」
いつもなら、仕方ねえなぁ〜とか言って頭あたりをポンポンしてくれるのに
今日は、こちらを振り返りもしない。
「怒ってるの?」
返事はない・・・。
「土浦君??」
と、呼びと土浦に近づいていく。
「お前は、俺と居るより加地と居る方がいいのか?」
香穂子の足が止まる。
「えっ!?」
相変わらずピアノに向いたまま振り返りうとしない土浦。
何を言われているか分からずに混乱しながら
「な、何言ってるの?」
突然土浦は立ち上がり香穂子の前までやって来る。
土浦の目は怖いくらい冷たかった。
「香穂。加地のほうがいいのか!!」
大きな声で吐き棄てるように怒鳴る。
あまりの恐ろしさに言葉がでてこない。
そして、土浦に香穂子を引き寄せると
強引に噛み付くようなキスをしてくる。
嫌だ、こんな奪うみたいな。お互いの気持ちのないキス何なんか。
『バシッ!!!』
練習室に大きな音が響いた。
そこには、土浦を突き飛ばし土浦の頬を叩いた手を握り締めた香穂子が立っていた。
我に返った土浦が香穂子に近づきながら話しかける。
「香穂。ごめ」
土浦が話終える前に自分の荷物を持って練習室を飛び出した。
床には香穂子が、落としていった涙の染みだけが悲しく残っていた。
つづく
あとがき
あれ?SSだったんですが・・・。
おかしいな。次回で終わりますね!!(たぶん)
よくありがちな話ですが。
ツッチーにヤキモチを焼いて欲しくて書いてしまいました。
レンレンよりは、まだ書きやすかったです。
加地君が可哀想な役でした。
いつか彼も幸せにしてあげたいです。
一度消えるというアクシデントがありましたが、なんとかUPできて
よかったです。
では、次回もまた遊びに来てくださいね!!
だっち
2011・6・28
<span style="font-size:large;">有意義な休日の作り方。その4</span>
「すみません。休みの日にワザワザ・・・・。こんなところに。」
寝てしまっている讓を前に呆れ顔の将臣に申し訳なさそうに謝るあそび。
「ビックリしたぜ。お前から助けてください〜って電話あったときは。」
笑いながら讓の前に座る。
そうなのです。
私は譲君が寝てしまいしばらくの間プチパニックになり、
譲君を起こそうと叩いてみたり、大きな声で呼んでみたりしたんだけど
ダメで、おんぶしよう試してみてもダメで、
どうしようと部屋の中で30分ほどウロウロ。
誰かに助けて貰えばいいと気がつくまで10分。
誰にかけようと迷って有川さんにかけるまで15分。
あれから一時間あまりスヤスヤ眠る譲君とあの居酒屋にまだいた。
相当混乱していたんだろう私。
有川さんにかけてから譲君が有川さん弟だと気がついた。
もっと、早く気がついていれば
こんな無駄な一時間過ごさなくてよかったのに・・・。
「なんでこんなことになってるんだ??譲に飲ませたのお前か?」
自分の頭をガシガシ掻きむしりながらあそびに尋ねる。
「違いますよ〜!!!」
泣きそうな顔で、事の次第を将臣に話す。
「じゃあ、お前が会ったときには譲はもうこんな状態だったのか?」
「寝ては居なかったんですが、泥酔に近かったですよ。」
「どうしたんだ?こいつ。」
寝ている讓を眺めながら眉間にしわを寄せている。
「20歳になったからお酒飲んでもいいとかは言ってましたけど。
譲君こんな、飲み方するようには見えないですけど・・・。」
「そんな奴じゃないんだけどなこいつ。
まぁ、いつもでもここにこのまましとくわけにはいかねぇな。」
と、立ち上がると讓をおんぶする。
勿論私も手伝う。
「今、敦盛がタクシー探してきてくれてるはずだ。」
「えっ?敦盛君も一緒なんですか?」
譲を背負って先を歩いている将臣に訪ねた。
「ああ、一緒に飯食っていたからな。」
「もしかして、ご飯の途中だったりしました?」
「ああっ。そうだよ。お前があんな風に電話かけてくるから何事かと
切り上げて、来んだんぜ。」
振り返って見た顔は苦笑いだった。
「すみませんでした。」
項垂れたように下を向くと。
「おいおい。元々お前は悪くないんだろ?それに身内のことだからな。
お前が気にすることね〜よ。」
こいつが悪いんだよ。と背負っている譲君のお尻を後ろ足で蹴り上げる。
それでもスヤスヤ眠る讓君を見て私達は笑った。
考えてみればそうなんだよね。
私は巻き込まれて、押し付けられたようなものなんだよね。
でも全く、なんて人たちなんだろう。
酔っている仲間を忘れて帰っちゃうなんて。
今度会ったらしっかりお説教部屋行きだね!!
店の外に出るとタクシーを待っている敦盛君がいた。
「敦盛。どうだ?」
「あと、5分ほどで来るそうです。それにしても譲は大丈夫なんだろうか。」
「平気だろ?無茶な飲み方でもしたんだろ。」
「讓が?珍しいこともあるものだな・・・。」
讓を心配そうな表情で見ている敦盛に話しかける。
「敦盛君。ごめんね、有川さんと食事の途中だったんでしょ?」
「いや。大丈夫だ。ほとんど終わっているようなものだったから。」
「そうなの?なら良かった。」
と、敦盛君の言葉にホッとしていると
「おいおい。敦盛まだコースの半分くらい残ってたじゃね〜か。」
と、有川さんの言葉にまた奈落の底に突き落とされた。
折角、敦盛君の言葉ではい上がってきたのに・・・。
有川さんの馬鹿〜!!!
元はといえばあなたの弟さんが酔いつぶれたのが原因なんですからね!!
自分の身内の穴ぐらい自分達でなんとかしろ!!
と、言いたいところですが先輩だし、いつもお世話になってるし、
コース半分で切り上げてきてくれたし、私なら、一気出ししてくださいとか言って
食べてから来るかも・・・。(ひどいやつですね私って・・・。)
だから、ここはぐっと言いたい言葉を飲み込んだ。
タクシーが来たようで有川さんが先に譲君を乗せ自分も乗る。
タクシーの中から有川さんが
「敦盛お前どうする?」
と、敦盛君に訪ねていた。
尋ねられて敦盛君は私の方を見る。
えっ?!なぜ私を見るの?
「どうしたの?敦盛君?」
黙ってあそびを見つめている敦盛を不思議に思い聞いてみる。
「いや、その一人で大丈夫だろうか?」
「はっ?」
未だに訳がわかってない私にイラっときたのか有川さんが
「一人で帰れるか聞いてるんだよ。敦盛は。」
と、言ってくれた。
あ〜。そういうことね。
「大丈夫、大丈夫!!私なら平気だよ!!いつものことだし。
さっ乗って有川さんを助けてあげてね。」
タクシーのおっちゃんに
『行ってください』と、言って敦盛をタクシーに押し込むと手を振る。
ドアが締まるとタクシーは三人を乗せて走り去っていった。
そして、あそびの有意義な休日な(?)は終わろうとしていた。
あ〜。なんだか濃い一日だったな・・・・。
休みなのに休んだ気がしないのはなんでだろう。
すっごい疲労感。
仕事してるより疲れた。
手にもっている九郎さんに買ったクッションの入った袋をブンブン振り回す。
家に帰ったら飲み直そう。
自分のマンションの部屋の階に着いたときブンブン振り回してる袋が
『スポーン』と、手からすっぱ抜けた。
『わ〜!!』
慌てて袋を追いかける。
すごい速さで飛んでいく袋に追いつくはずも無く、
突き当たりの部屋のインターホンにぶつかった。
『ピンポーン』
という音共に。
ミラクル・・・。
すみませんこんな深夜に・・・。
『ガチャリ』
ドアの前に落ちている袋を拾っていたときドアが開いた。
出てきた部屋の住人らしき人に謝らなきゃとを上目遣いで見上げると。
<span style="font-size:large;">「えっ、えっ、えっ、え〜〜〜!!」</span>
「深夜だ。静かにしなさい。」
そこには龍神の料理長のリズさんが立っていた。
「はっ、はっ、はい。すみません。」
ていうかなんでそんなに冷静でいられるんですか!!!
急に知り合いがピンポン鳴らして現れたんですよ!!
少しくらい驚くましょうよ!!
私が驚きのあまり口をパクパクさせてリズさんに指までさしている姿を見て。
「お前と同じマンションだと知っていたが、こんな形で会うと思わなかった。
驚いたな。」
それで驚いてるんか〜い!!
目が少し大きくなってるくらいで表情余り変わってないんですけど。
突っ込みたい突っ込みたいけど・・・リズさんには無理です。
私なんか目が飛び出そうでしたよ!!
リズさん見た瞬間・・・・。
「水森それで私に何かようか?」
切り替え早いですね〜リズさん。
「いや、間違えてインターホン押してしまっただけで。用事はないんです。」
バツが悪そうに下向き加減でリズに話すと
「そうか。なら、また明日だな。お前も早く帰って休みなさい。」
と、優しい顔で言われてしまった。
「はい。夜分遅くにすみませんでした。おやすみなさい。」
と、一礼して言い終わっるとドアの前から去った。
自分の部屋の前につくと『パタン』と、扉の締まる音がした。
どうやら、部屋に着くまで見ていてくれたらしい。
気がつかなかった、リズさんと同じマンションだったなんて。
一度もあったことなかったもんね。
一度リズさんにの部屋を見てから自分の部屋に入った。
部屋に入ると崩れるように座り込む。
本当に本当に大変な一日でした。
これを有意義な休日というのでしょうか・・・。
いや、違う・・・。
こんな休日もう二度とゴメンだ〜。
明日からまた長い一週間が始まるのに一週間頑張る活力が湧きません。
来週はもう部屋から出ません。
部屋でオトゲーでもやろう。
来週こそは有意義な休日を作ってやる〜!!
そう心に強く誓うあそびだったが、来週は弁慶のソムリエ教室ということを
スッカリ忘れ夢の世界へ旅立ったのであった。
つづく
あとがき
龍神集中連載と自分で決めて頑張ってました。
これより個人ルートに入るわけです。
少し休憩が必要かも・・・。
休んでる間に土×日を仕上げようかな〜。
弁慶さんのソムリエ教室実はケータイHPの方にUPしてるんです。
龍神も同時連載してるんですが。
興味があるかたはご連絡頂けたらだっちのHPにご招待します!!
駄作文なので期待はしないでくださいね。
だっち
2011・7・5
<span style="font-size:large;">有意義な休日の作り方。その3</span>
一人家でご飯なんて食べる気分じゃなかったので、学生時代アルバイト先で
仲良くなった先輩を呼び出した。
「郁恵さんここです〜。」
店に入ってきた郁恵に自分の座っているカウンター席から手を振った。
あそびに気がついて郁恵もまた手を上げて近づいてくる。
「おまたせ!!」
あそびの隣の席に腰を下ろす。
郁恵さんは、私が料理の専門学校に行っていたときに凄くお世話になった人。
一人暮らしを始めて戸惑っていた私を、助けてくれたり、
ご飯を食べに連れていったり、
お酒を教えてくれたもの郁恵さん、私にとって恩人の様な姉の様な存在の人。
そして料理の世界では私の憧れの人なの。
郁恵が座ってから飲みの物を注文すると
「急に呼び出してすみませんでした。」
おしぼりで手を拭いている郁恵に謝る。
「いいよ。私も丁度お酒飲みたい気分だったし。あそびにも会いたかったしね。」
と、優しく笑ってくれる。
「私も会いたかったです。どれ位ぶりですかね??」
「一年ぶりくらいかな??お互い仕事忙しいからね〜。仕方ないんじゃない?
でも、元気そうで良かった。」
運ばれてきたビールで乾杯をする。
さっきも言ったけど郁恵さんは私にお酒を教えてくれた人だ、
だからお酒にはメッポウ強い。
「やっぱり、最初の一杯のビールは美味しいね〜!!」
満足げに半分ほど飲み干すとグラスを置く。
「で、今日は何があったの?」
食べ物のメニューを見ながらさりげなく聞いてくる。
「うっっ?いくえさん・・・。」
メ二ューを見ている郁恵を見て苦笑いをした。
カウンターごしに注文を終えるとあそびをみて
「わからないわけないでしょ?あんたが、私に連絡とってくるときは
必ずと言っていいくらい落ち込んでるか、なんかやらかしてもう辞めます〜
とか言ってるんだから。で、何があったの?」
残りグラスのビールを飲みながら横目であそびを見ている。
郁恵には誤魔化しや嘘は通用しない。
あそびは、平家から龍神に最近職場が変わったことや今日あったことなど
心にあったモヤモヤを郁恵に全部話した。
「ふ〜ん。」
二杯目のビールを飲み干して、ドリンクメニューを見ている郁恵はそっけない返事をした。
「あそび、日本酒にしようか。七海山?久保川?どっちにする?」
「あの・・・?郁恵さん聞いてます?」
「飲むの?飲まないの?」
鋭い目であそびを睨む。
「・・・・七海山でお願いします。」
あそびは郁恵にはいろんな意味で、頭が上がらないのである。
なんか、武蔵坊さんと一緒にいたら大変なことになりそう・・・。
「了解!!」
上機嫌で注文をする。
「で、あんたはなんでそんなに落ち込んでるわけ?」
「だから、」
「だって、アンタのせいじゃないでしょ?梶原さんの事にしたって、
その源さんだったけ?
むさしっーか、あんたの店の人名前が言いにくし長い。」
一人でブツブツ言っている郁恵。
そんなこと私に言われても・・・。
困るんですが。
「まぁ、いいや。」
はやっ!いいんですか!?
やっぱりいろんな意味ですごいな郁恵さんって。
「話戻すよ。皆さあんたより大人なんだよ。大きな傷や秘密だってあるよ。
それにあんたにだって一つや二つあるでしょ、知られたくないことや秘密なこと
誰にだってあって当然なんだからさっ。」
「郁恵さん。」
「まあ、あんたが一番気にしてるのは梶原さんだったけ?
何時もどうりにするのがいいんじゃない?
優しい人なら余計にね。
あんたより気にしてるのは向かもしれないし。
それに、バツイチだからってなんのも変わらないでしょ?
失敗してるから悪いって事もないし。
失敗したから分かることも多いと思うよ。、
そういうのは、私には経験ないからわからないけどさ。
でも、痛みを知ってるって大事なことだよと思うんだよね私はさっ。
だから、あんたは今まで通り彼に接するのがいいんじゃない?」
郁恵の言うことに少し胸が軽くなる。
「郁恵さん。そうですよね。」
「さっ!!飲もうあそび!」
と、運ばれてきたお酒をのみはじめた。
郁恵に話したことでスッキリしたのか酒が進む進む。
二人で盛り上がってると私たちのところに酔っ払っている大学生らしき
男の子がやって来た。
「お姉さん達楽しそうですね!!一緒にどうですか?」
ナンパですか・・・。
しかも大学生に郁恵さん勿論断りますよね?
と、隣にいるはずの郁恵を見る。
いません・・・。
既に、ナンパらしきをしていた男の子と肩を組んでそちらの集団に向かっている。
『青年酒は好きか?』とかなんとか言って・・・。
「郁恵さ〜ん。待ってくださいよ。」
郁恵と自分の荷物を持って二人を追いかける。
なんだか、振り回されてる気がするんですが・・・。
二人を追いかけていくと、お座敷で学生が盛り上がっていた。
若いな〜。と学生達を見ていると中に見たことある顔がある。
『譲君!?』
壁にもたれ掛かって半分夢に中に足を突っ込んでるような顔をしている。
近くにいる学生に確認してみると『そうですよ、知り合いですか?』と逆に聞かれた。
譲に近づくと、かなり飲まされたのか
酒臭い・・・。
この間譲君どうだったっけ??
飲んでなかってような気がする。記憶があるまではだけど。
それに彼はまだ未成年じゃなかったかな・・・。
「大丈夫?譲君、わかる私水森だけど。」
話しかけてみる。
ゆっくりとあそびを見ると
「あれ〜??みじゅもりはんじゃないへすか。」
と、ニヤニヤしながら起き上がる。
・・・・。
譲君聞き取れないんですが・・・。
「どうしてここひいるんでしょか。」
少し赤くした顔にトロ〜んとした目で見つめられる。
///。
今日の譲君ギャップが激しいよ。
女の子はそのギャップに弱いのよ!!
それになんだか、妙に色っぽいんですけど譲君。
ズルイよ。
「大丈夫なの?こんなに飲んで、未成年でしょ?」
照れる自分を誤魔化しように少し怒ったように讓に言う。
「俺、今月20歳になるんですよ〜。」
今度は聞き取れる言葉で言ってくれた。
相変わらず酔ったままだが。
「そうなんだ。でも、こんなになるまで飲んだらダメだよ。」
心配そうに讓を見ると、
「このあいらの、水森なんに言われたくないです〜」
・・・・。
その件に関しては何も言えませんけど・・・。
「譲君、もう帰ったほうがいいんじゃない?ねっ?」
誰かにと、他の学生に声をかけようと周りを見た。
あれ?
・・・・・。
私たち以外誰もいないんですが・・・・。
静かになったなぁ〜とは思ってたんだけど
まさかこんなところで置いてきぼりをくらうなんて・・・。
郁恵さんは??
と携帯で電話をしようとしたときメールが一件入ってきた。
『ごめん。急用が入って先に帰るね〜。お会計はしておいたから。
またね〜。』
声もかけずに郁恵さん。
さようですか・・・・。
学生の中に私を置き去りにして郁恵さん・・・。
御馳走様でした。
まぁ。その学生たちにも置いて行かれたんですけどね・・・。
そんなに存在感無かったかな?
そう言えばそんなこと考えてる暇なかったんだった。
譲君だ!!
と、讓を見ると
『すー、すー、すー』
気持ち良さそうに寝ている。
余程眠かったんだね〜。
うんうん。気持ちよさそうだね〜
<strong>ぢゃね〜よ!</strong>
こんな所で寝られたら私どうしたらいいのよ!!!
起きる気配もない。
おんぶできるほど私は力持ちじゃない。
このまま放置?
出来るわかないじゃん。
<span style="font-size:large;">どうしたらいいのよ〜!!!</span>
つづく
あとがき
前半少し暗くなってしまいました。
堪にはいいですよね!!
あと一話で休日編終わる予定です。
個人ルートはまだ迷い中です。
だっち
2011・7・4
<span style="font-size:large;">有意義な休日の作り方。その3</span>
「えっ?もしかしたら梶原さんですか?」
大きな荷物のせいで顔が半分しか見え無いので確認してみる。
「そうだよ〜。あれ、顔見えないか。ごめんごめん。」
荷物を一度降ろすとあそびにいつもの笑顔を見せてくれた。
「こんにちは。偶然ですね。というかその大きな荷物どうしたんですか?」
景時の足元にある大きな箱を見ながら訪ねた。
「あ〜これ?運ぶのを手伝ってるんだ。」
「えっ?手伝ってる?ですか。」
「うん。」
どうやら、梶原さんは買い物をしていてお年寄りの人がこの箱を運ぶのを
見て自分が運びますよ。と、自らその人に名乗り出てここから少し先のその
人の家まで運んでいるらしい。
この暑いのに・・・。
本当いい人なんだなぁ。
梶原さんって。
普段から思ってたけど。怒ったりしなさそうだし。
ソモソモ、怒ったところ想像できないし。
まぁ〜。少し頼りなさそうなところもあるけど。
こういう優しさって大事だよね。
「梶原さん優しいんですね。」
と、笑いかければ少し照れたように
「そんなことないよ〜。」
はにかんでいる。
「謙遜しないでくださいよ。良いことじゃないですか。」
と言えばそうかなと、笑う。
それが、なんだかとても可愛く見えて思わず
「私も手伝いますよ。」
と、言ってしまっていた。
いいよ。と、断られたけどなんだか無性に手伝わなくてはという
気持ちになってしまって半ば強引に
「さっ。行きましょう。」
と、箱の半分を持ち上げる。
「ほんといいのに〜」
なんて言いながら梶原さんも、もう半分を持ち上げたんだけど。
持ち上げて初めて気がついた。
運びにくい・・・・。
ちらっと梶原さんを見ると目が合いお互い苦笑い・・・。
忘れていたんだけど私の身長は梶原さんよりもだいぶ小さい。
ので釣り合うはずも無く・・・。
「あの、言い出しておいて何なんですが。運びにくくないですか?」
「はっはっはっ。」
梶原さんから乾いた笑いが返ってきた。
「すみませんでした。私が言い出しておいて。」
結局、元通り梶原さんが一人で荷物を持運んでいる。
何がしたかったんでしょうか。私は・・・・。
「いいんだよ。ありがとうね。」
「お礼なんて言わないでくださいよ。結局私、何にもしてないんですから。」
申し訳なさそうに俯けば
「こうやって、俺の話し相手になってくれてるじゃない?付き合う必要もないのに
付き合ってくれてるし。」
本当に梶原さんて・・・。
「なんでそんなにいい人なんですか!!」
「えっ!?俺が?」
他に誰がいるんですか!!
あなたですよ!!
「はい。」
と答えれば。
「そんなことないよ。」
と、一瞬影のある顔になった。
「えっ?」
あれ?どうしたのかな?と梶原さんの顔を見つめていると
そんな私に気がついたのか、
「ごめんごめん。今のは気にしないで。」
と、いつもの笑顔をに戻っていた。
荷物を届け終わると何度も何度もお礼を言われてお金を渡されたが
梶原さんは頑としてそれを受け取らなかった。
「良かったんですか?受け取らなくて。」
「うん。だってそんな大したことしてないのに、お金なんて受け取れないよ。」
こんなに暑くて、あんなに重たいものを運んだのに大したことないって
言えるって梶原さんて凄いな〜。
私なら、受け取ってるような気がする。
何となく梶原さんならいいダンナさんになるんじゃないかな〜。
なんて思ったので
「梶原さんって。いい旦那さんになりそうですね。」
と、なにげなく言ってみる。
「・・・・。」
黙っている景時の顔が沈んで見える。
あれ??
そうかな〜。なんていう言葉を想像していたあそびだったが
景時の顔を表情を見て驚いた。
「か、梶原さん?」
あそびの声にハッと我に返り。
「ごめんごめん。」
困ったようにあそびを見る。
「私何か気に障るようの事。」
「ううん。違うんだ。実はさ俺バツイチだから、いい旦那さん何かには
程遠い存在かな〜。なんて思っちゃったりして。」
と、笑ってくれたがその表情は寂しそうだった。
「す、すみませんでした。その、私知らなくて・・・。」
慌てて景時に謝る。
気にしないで。もう昔のことだしね、なんて笑っていってくれる。
でも、その笑顔が余計に梶原さんを痛々しく見せる。
触ってはいけないもの。そう感じた。
そのあと、梶原さんに
『この後一緒にご飯でも行きたいんだけどちょっと用事があるから、ごめんね。』
と言われていまったので、再び私は一人に戻ってしまった。
時刻はすっかり夕方になっていた。
つづく
あとがき
す、すみませんm(_ _)m
全国の景時さんファンの皆様。
いくらパラレルとはいえ景時さんをバツイチ扱いしてしまいました。
どうか、大きな心で読んでいってくれるとありがたいです。
景時さんは今まで登場がリズさんと同じくらい少なかったので
多い目に書いてみました。
もう少し休日編にお付き合いください。
だっち
2011・7・2
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